農業委員会組織について

農業委員会組織とは

農業委員会組織は、「農業委員会等に関する法律」(以下、「法」と言います。)に基づき、次の3つの組織で構成されています。

    1. 市町村農業委員会
    2. 都道府県農業会議(都道府県農業委員会ネットワーク機構)
    3. 全国農業会議所(全国農業委員会ネットワーク機構)

これらは、地域ごとの実情を踏まえた農地法等に基づく公平な許認可の法令業務や各般の取り組み、農業委員会を構成する農業委員や農地利用最適化推進委員の活動を支援するとともに、農業・農村の現場が抱える課題や幅広い農業者の意見を全国的規模で集約し得る組織形態となっています。

市町村農業委員会

市町村農業委員会は、法に基づいて市町村に設置が義務づけられている行政委員会です。農業者の代表である農業委員と農地利用最適化推進委員で構成されており、農業委員は市町村長が議会の同意を得た上での任命(法第8条)、農地利用最適化推進委員は農業委員会の委嘱(法第17条)により、それぞれ選任されることとなっています。
農業委員会の業務は、法第6条に規定されていますが、つぎの3つに大きく区分されます。

  1. 農業委員会の専属的権限に属する所掌事務(法第6条第1項及び第2項に規定)
    農業委員による合議体の行政機関(行政委員会)として、農業委員会だけが専属的な権限として行うこととされる業務です。
    この業務には、農地の権利移動についての許認可や農地転用の業務を中心とした農地行政の執行をはじめ、農地に関する税制、農業者年金などにかかわる業務も含まれます。
    これらの業務は、それぞれの地域の土地利用のあり方を踏まえた優良農地の確保とその有効利用をすすめる上で、とくに重要となっています。
    また、法第6条2項では、「農地等の利用の最適化」(担い手への農地利用の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入の促進)を強力に進めていくために、農業委員会の事務が重点化されました。
  2. 農業委員会の専属的権限に属しない事務(法第6条第3項に規定)
    農業委員会が農業者の公的代表機関として農地の利用調整を中心に地域農業の振興を図っていくための業務です。
    とくに、育成すべき農業経営の目標を定めた市町村の「基本構想」(農業経営基盤強化促進法に基づく市町村の育成方針)の実現に向けた認定農業者の育成と、農地流動化、農業経営の法人化等を進める取り組みが強く期待されています。
    また、農業および農業者に関する調査研究や情報提供に関する業務についても、農業の発展と農業者の地位向上を図るとともに、各種の業務を円滑に行う基盤として位置づけられています。
  3. 関係行政機関等に対する農業委員会の意見の提出(法第38条に規定)
    この業務は、農業委員会の行政機関としての性格ではなく、農業者の公的代表機関としての性格を前面に押し出したもので、その主たる業務である「農地利用の最適化の推進に関する事務」に集中して取り組むことができるように、地域内の農業および農業者に関する事項について意見を公表したり、行政庁に建議する業務です。
    今、真に農業者や地域の農業の立場にたって、その進むべき方向とこれを実現するための政策のあり方を明らかにしていくことは、農業者の代表として選ばれた農業委員や農地利用最適化推進委員で構成される農業委員会の極めて重要な役割です。
    なお、2015年(平成27)の改正法では、改善意見を提出された関係行政機関は、その意見を考慮しなければならないこととなっており、農業委員会が提出する意見については、「農地等の利用の最適化の推進に関する施策に関わる農業・農村の問題を幅広くくみ上げた現場の意見が反映されるようにすること」との参議院の附帯決議があります。

都道府県農業会議(都道府県段階の農業委員会ネットワーク機構)

都道府県農業会議は、行政機関である市町村農業委員会とは異なり、法に基づいて都道府県知事の指定を受けた指定法人(一般社団法人)です。原則として管内の全市町村と市町村農業委員会の会長が会員になり、さらに都道府県内の各種農業団体の代表、学識経験者等の団体・個人の会員で構成されています。
都道府県機構の業務は、法第43条に規定されている、1. 農地法等の法令に基づく行政行為を補完する業務(専属的業務)と、2. 農業および農業者の代表機関として行う業務(非専属的業務)、3. 法53条に規定される関係行政機関等に対する農業委員会の意見の提出の3つに区分されます。

  1. 専属的業務(第43条第1項に規定)
    農地法等の法令により都道府県農業会議が専属的に行うこととされている業務で、農地法等に基づく行政の行為を都道府県農業会議が補完するものです。
    たとえば、農地法において、農地を農地以外の用途に転用するには都道府県知事等の許可が必要となりますが、それを許可する場合に農業委員会はあらかじめ都道府県農業会議の意見を聴くこととされている(30アール超の転用については必須、30アール以下についても意見聴取が活用できる)などの業務です。
    農地法のほか農業会議の専属的業務を規定している法令としては、農業経営基盤強化促進法、市民農園整備促進法、農業振興地域の整備に関する法律、土地改良法など多岐にわたっています。
  2. 非専属的業務(法第43条第2項に規定)
    農業委員や農地利用最適化推進委員を対象にした複式農業簿記の講習会や農業経営者・農業法人等の組織活動のサポートなどの農業経営の近代化を支援する業務、農業・農業者に関する正しい知識や正当な認識を農業者や農業団体、他産業部門に向けて情報提供する業務も担っています。
    さらに、市町村の農業委員等に対して講習や研修を行うことや、農業委員会の所掌事務に対し協力を行う業務などがあります。
  3. 関係行政機関等に対する農業委員会の意見の提出(法第53条に規定)
    都道府県農業会議がその業務の実施を通じて得た知見に基づいて、農業委員会が農地等の利用の最適化の推進をより効率的かつ効果的に実施するために必要があると認めるときには、農業委員会と同様に、意見を提出する義務があります。また、改善意見を提出された関係行政機関等は、農地等利用最適化推進施策の企画立案やその実施にあたっては、その意見を考慮しなければならないこととされています。

全国農業会議所(全国段階の農業委員会ネットワーク機構)とは

全国農業会議所は、法に基づいて農林水産大臣の指定を受けた指定法人(一般社団法人)です。都道府県農業会議の会長が会員になり、さらに全国段階の各種農業団体の代表、学識経験者等の団体・個人の会員で構成されています。
会員相互の連絡調整、農業一般に関する意見の公表、情報の提供などを行うことによって、農業生産力の増進や農業経営の合理化を図り、農業の健全なる発展に寄与するとともに、市町村農業委員会、都道府県農業会議の事務の効率的・効果的な実施を支援しています。

全国農業会議所HP

農業委員会組織の歩み

組織がどのように成り立ってきたか、その歴史をご紹介いたします

1951年7月、農業委員会法が制定され、従前の農地委員会、農業調整委員会および農業改良委員会の3委員会を統合した行政委員会として市町村に「農業委員会」が発足しました。
この農業委員会制度は、その後、1954年、1957年および1980年の3度にわたって大きな法律改正がおこなわれ、1954年の法律改正では、従前の都道府県農業委員会が廃止されて都道府県段階に「都道府県農業会議」が設立され、全国段階には新たに「全国農業会議所」 が設立されて、農業・農業者の利益を代表する3段階の組織が確立して今日にいたっています。
発足以来、農業委員会組織は、「土地と人(担い手)」対策を活動の目標において、農地制度の適正な執行にあたるとともに、農地の有効活用と経営感覚にすぐれた農業経営者の育成と支援を図るため農業の構造政策の推進に努めてきています。

この間の、おもな農業政策の動きと農業委員会系統組織の取り組みの一端をご紹介します。

年号・年度 農業施策 農業委員会組織
昭和25 ■農地改革ほぼ終了  
昭和26 ■農業委員会法制定 ■農業委員会が発足
■第1回農業委員統一選挙
昭和27 ■農地法制定(自作農主義の制度化) ■農地法制定への対応
昭和29 ■農業委員会法改正 ■都道府県農業会議、全国農業会議所が発足
昭和30 ■GATT加盟。米予約売渡制導入  
昭和34   ■農家台帳作成
昭和35 ■農産物121品自由化  
昭和36 ■農業基本法制定 ■農業基本法制定促進と農業法人法制化を要望
昭和37 ■農地法改正(農業生産法人認める) ■農地法改正運動
昭和38 ■第1次農業構造改革事業スタート ■国有林野解放促進要望
昭和40 ■第1次土地改良長期計画スタート ■全国養鶏経営者会議・全国養豚経営者会議設立
昭和43 ■都市計画法制定 ■全国稲作経営者会議設立
昭和44 ■農業振興地域整備法制定。
■自主流通米制度発足
■第1回全国農業経営者研究大会
昭和45 ■第2次農業構造改善事業スタート
■農地法改正
■農業者年金基金法制定
■農地法改正
■農業者年金基金法制定運動
昭和46 ■総合農政の推進
■米生産調整開始
■国有林野活用法制定運動
昭和47 ■米買入制限  
昭和48 ■穀物ショック(米国大豆輸出禁止) ■土地と農業を守る運動を展開
昭和49 ■備蓄制度開始(大豆・飼料作物)  
昭和50 ■農振法改正。国民食糧会議 ■農用地利用増進事業スタート
昭和52 ■水田利用再編対策スタート ■農業委員会制度の改正運動
昭和55 ■大冷害
■農用地利用増進法制定
■農地3法(農用地利用増進法、農地法改正、農業委  員会法改正)制定運動
昭和56 ■食管法改正(配給制度の廃止)  
昭和58 ■他用途利用米の導入 ■農産物輸入自由化阻止運動
昭和59 ■日米農産物交渉決着 ■農地を守り有効活用する運動
昭和60   ■自立農家等登録制度を答申
昭和61   ■全国構造政策推進会議発足
昭和62 ■米国コメ市場開放要求 ■全国新規就農ガイドセンター発足
昭和63 ■牛肉オレンジ自由化で合意 ■コメの自給政策堅持を決議
平成1 ■農産物12品目自由化 ■農地2法(農用地利用増進法改正、特定農地貸付法) 制定運動
平成2 ■自主流通米価格形成機構発足 ■農業者年金基金法改正運動
平成3 ■生産緑地法改正 ■コメを守る緊急国民総決起大会
平成4 ■新政策発表、水田転作の緩和 ■農業の担い手確保方策を答申
平成5 ■農業経営基盤強化法制定  
平成6 ■緊急輸入米255万トン ■全国農業経営改善支援センター開設
平成7 ■WTO体制スタート
■新食糧法施行
 
平成8 ■農協改革2法成立 ■全国農業法人協会設立
平成9   ■新たな基本法制定「1000万人署名運動」
平成11 ■米の関税化移行
■食料・農業・農村基本法制定
■地域農業再生運動スタート
■(社団法人)日本農業法人協会設立
平成12 ■食料・農業・農村基本計画策定 ■農業者年金制度改正に関する意見集約
平成13 ■農地法改正(農業生産法人要件緩和)
■農業者年金基金法改正(積立式へ)
■「改革プログラム」策定
平成14 ■「食と農の再生プラン」策定 ■BSE(牛海綿状脳症)対策の強化と食の安全・安心   確保に向けた抜本対策に関する要請
■「地域農業再生運動」第2ステージスタート
平成15 ■構造改革特別区域法制定
■農業経営基盤強化促進法一部改正
■農業分野の構造改革特区に関する要請
平成16 ■農業委員会法の一部改正 ■WTO農業交渉とFTA・EPA交渉に関する要請
平成17 ■新たな「食料・農業・農村基本計画」 ■農地と担い手を守り活かす運動スタート
平成18 ■担い手経営安定新法成立  
平成19 ■農政改革三対策スタート  
平成20   ■新・農地と担い手を守り活かす運動スタート
平成21 ■農地法等改正法の制定・施行  
平成23 ■農業者戸別所得保障制度本格実施 ■地域の農地と担い手を守り活かす運動スタート
■全国女性農業委員ネットワーク設立
■新農業者年金制度加入者が10万人突破
平成27 ■農協法の改正
■TPP交渉大筋合意
 
平成28 ■改正農業委員会法施行
■「農業競争力強化プログラム」の策定
■都道府県農業会議、全国農業会議所が共に一般社団法人となる
平成29 ■TPP11が「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定」を大筋合意
■「農林水産業・地域の活力創造プラン」の改訂
■日EU経済連帯協定の大筋合意
■日本農業技術検定の受験者が最多の2万7千人へ